【法改正】育児・介護休業法が変わります ② 介護編

令和7年4月施行の「育児関係」の改正事項についてのご紹介、「介護関係」編です。「育児関係」の改正については前の記事をご覧ください。

1)介護離職防止のための個別の周知・意向確認(義務)

「家族の介護が必要になりました」と申し出た従業員に対し、介護両立支援制度等に関する情報を個別に知らせ、その制度を利用するかどうか、意向を確認することが事業主に義務付けられました。これは介護との両立に関する支援制度を、介護に直面した従業員に確実に知らせるとともに、その制度利用の申し出が円滑に行われるようにするためです。
具体的な周知事項は、①介護両立支援制度等の内容 ②制度を利用する際の申出先(例:総務担当者など) ③介護休業給付金に関すること の3つで、
個別周知と意向確認の方法は、面談、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかとされています。

2)介護に直面する前の早い段階(40歳等)での介護両立支援制度等に関する情報提供(義務)

①従業員が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度 または
②従業員が40歳に達した日(誕生日)の翌日から1年間
このどちらかに、従業員に対し介護両立支援制度等に関する情報提供をすることが事業主に義務づけられました。40歳なのは、介護保険料を納め始める年齢なのと、年齢的にも親の介護等が始まる頃でもあるためです。家族の介護に直面する前の段階から介護に関する情報を前もって従業員に伝えておくことで、実際に介護が始まるときに介護と仕事の両立を円滑にできるようにしておく、という目的があります。
具体的な情報提供事項と情報提供の方法は、1)の「周知・意向確認」と同じです。

3)介護離職防止のための雇用環境整備(義務)

従業員からの介護両立支援制度等の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主は次の①〜④のどれかの措置を取ることが義務づけられました。
①介護両立支援制度等に関する研修の実施
②介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口の設置)
③自社の従業員の介護両立支援制度等の利用事例の収集・提供
④介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知(自社の従業員へ)
このうち1つの措置を講ずれば、事業主の義務を果たしたことになります。最も手っ取り早く効果があるのは①の研修の実施でしょうか。例えば年度の初めや比較的手すきの時期などに、全従業員を対象とした研修会を毎年行うなどのやり方が考えられます。

4)介護休暇を取得できる労働者の要件緩和

「子の看護休暇」同様、例えば入社してすぐの従業員も介護休暇を使えるようになりました。ただし「週の所定労働日数が2日以下」の従業員については、従前どおり労使協定により除外できることになります。

5)介護のためのテレワーク導入(努力義務)

常時介護を必要とする状態にある対象家族を介護する従業員がテレワークを選択できるよう措置を講ずることが事業主の努力義務となりました。
なお、この「常時介護を必要とする状態」の判断基準も、この4月から細かく見直しがされています。

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育児介護休業法は、雇用保険法と並んで改正の多い法律です。そのため弊事務所では、就業規則を見直したり新規に作る際、本則と育児介護休業規則を分けて作ることをおすすめしています。
この4月からの改正点も、例えば「子の看護休暇等」で対象となる子の年齢が伸びており、就業規則の変更と労働基準監督署への届出が必要になってくるものです。常時10人以上の労働者のいる事業所は、今回の育児介護休業法改正点を盛り込んだ就業規則の届出をお忘れなく。

 

【法改正】育児・介護休業法が変わります ① 育児編

こんにちは、宗谷・稚内の社労士、はまなす社会保険労務士事務所の日野です。

令和7年度は育児・介護休業法でいくつかの法改正があります。この記事では、まず令和7年4月施行の「育児関係」の改正事項についてご紹介します。「介護関係」については次の記事をご覧ください。

1)子の看護休暇の見直し

◯子の看護休暇の対象となるのは「小学校就学の始期に達するまで」の子でしたが、この4月からは「小学校第3学年修了まで」に拡大されました。ちょうど3年、延びたかたちです。

◯この休暇を取得できる理由にも「感染症に伴う学級閉鎖」「入園(入学)式」「卒園式」を追加。

◯労使協定により除外できる労働者から「継続雇用期間6か月未満」を撤廃。例えば入社してすぐの従業員もこの看護休暇を使えるようになりました。ただし「週の所定労働日数が2日以下」の従業員については、変わらず労使協定により除外できることになります。

◯この見直しに伴って、名称を「子の看護等休暇」に変更。

2)所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大

請求が可能となる従業員の範囲が「3歳未満の子を養育する労働者」から「小学校就学前の子を養育する労働者」になります。この4月からは小学校に入る前の子どもを持つ従業員が申し出れば、所定外の労働(残業)の免除が認められます。

3)育児のためのテレワーク導入(努力義務)

3歳に満たない子を養育する従業員がテレワークを選択できるよう措置を講ずることが事業主の努力義務とされました。現状はあくまでも「努力義務」ですが、IT技術の発達や更なる育児環境改善の時代の要請により、いずれは「義務」になるかもしれません。

4)短時間勤務制度の代替措置にテレワークを追加(努力義務)

現在の制度では、3歳に満たない子を養育する従業員が短時間勤務を選択できるようにすることが、事業主の義務となっています。ただし、仕事の性質により、どうしても短時間勤務の措置を講ずることが難しい労働者(国際線のCAなど)については、労使協定を結んで代替措置を講ずれば短時間勤務の対象外とすることができるようになっています。この4月からは、その代替措置のメニューの1つとしてテレワークが追加されました。

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育児介護休業法は、小さな子どもを育てながら働く人々がより働きやすくなるよう、幾度となく改正を重ねてきました。この4月からの改正は、看護等休暇の対象となる子どもの年齢が3年以上伸びるなど、かなり大きな変更になっています。

 

【雇用保険】自己都合退職の給付制限などが変わります

こんにちは、宗谷・稚内の社労士、はまなす社会保険労務士事務所の日野です。

先の通常国会で雇用保険法の一部が改正され、5月17日に公布されました。今年の10月から令和10年10月の4年間で、主に育児休業関連の給付などが大きく変わることになります。

改正点はいろいろあるのですが、私が注目しているのは次の2つです。

1)自己都合離職者の給付制限が原則1か月に(令和7年4月から)

会社の都合でなく、自分の都合で仕事を辞めた場合、今は原則として基本手当(失業手当)をもらうまで2か月待たなければなりません。それが来年の4月からは、ハローワークで手続きをしてから原則1か月で基本手当の受給が始まります。以前は3か月待たねばなりませんでした。それが長すぎる、という指摘があり令和2年から2か月になり、ついに1か月に短縮されます。

2)週10時間の労働で雇用保険が適用に(令和10年10月から)

今は週の所定労働時間が20時間以上の人が雇用保険の対象になっています。それが令和10年からは週10時間以上で雇用保険が適用されることになり、給与から雇用保険料も引かれますし、離職したとき条件に当てはまれば基本手当(失業手当)をもらえることになります。
例えば、週3日、1日5時間だけパートで働いている、という人がいるとします。このパターンだと週の所定労働時間は15時間なので、今は雇用保険の対象にはなっていません。しかし4年後の10月からは雇用保険が適用されることになります。

雇用保険法はもともと、改正がすごく多い法律です。人々が働くかたちがどんどん多様化するのに合わせるためなのですが、制度改正が追いついてないのでは、と思うこともしばしば。上に挙げた2点も、人々の働き方に大きなインパクトを与える改正だと思います。厚生労働省によると、2)の適用拡大により、新たに雇用保険の適用対象となるのは最大で「約500万人」の見込みだそうです!